最近フィリピン籍に転籍する船が増えていることを耳にすることがありますが、何か国が政策をしているのでしょうか。
日本系や中国系船主の一部で、船籍をフィリピンへ移す動きが見られるのは事実です。ただし、パナマやリベリアのような「典型的な便宜置籍国(FOC)」への転籍とは少し背景が異なります。
結論から言うと、フィリピン政府は近年、国際船舶登録制度の強化と税制優遇制度の導入を進めており、それが船主の関心を集めています。
主な理由は以下です。
① フィリピン国際船舶登録制度(PISR)の創設
フィリピン海事庁(MARINA)は、
・登録手続の簡素化
・抵当権(Mortgage)の国際的承認
・Reflagging手続の円滑化
・行政手続の一本化
などを目的とした新しい国際船舶登録制度を推進しています。2025年には関連法案が優先法案として審議されています。
これはシンガポール国際船籍(SIS)や香港船籍に近い方向性です。
例えば、MARINAは船籍誘致に関する公式発言をしています
1.2025年のMARINA会合での公式コメント:
「船籍登録および再登録(reflag)制度を明確化し、手続きを効率化する。さらに、船主の責任制限や国際的な抵当権制度との整合を図り、ビジネスコストを低減するインセンティブを導入する」
MARINA、船舶登録に関連する優先法案に関するFGDを保有 – 海事産業庁
2.「外国船を引きつける」という明確な国家目的 :
政策説明の中でフィリピンの制度は、「競争力のある規制環境を整備し、外国船主が自国旗に登録することを誘引する」ことを目的とする
MARINA、船舶登録と造船法案の優先推進を更新 – PortCalls Asia
② 税制優遇の拡大
MARINAは船籍誘致のため、
・海外航海船向けの税制優遇
・登録費用の軽減
・船主・オペレーターのコスト削減
を目的とした法案を推進しています。
従来からフィリピンには海外海運業育成法があり、フィリピン船籍を利用する事業者向けの優遇措置が存在します。
③ 世界最大の船員供給国という強み
フィリピンは世界最大級の船員供給国です。
船籍と船員国籍を一致させることで、
・船員雇用管理
・STCW管理
・MLC対応
・旗国検査対応
が効率化できるケースがあります。
④ 東京MOUでの評価改善
以前のフィリピン船籍はPSC面で必ずしも評価が高くありませんでしたが、近年はMARINAがIMO監査や旗国監督体制の強化を進めています。
そのため、
・安いだけの船籍
・PSCで狙われる船籍
というイメージから脱却しようとしています。
実際Tokyo MOUレポートでもPSCだけ見れば”High Performance”であることが記載されています。Flag-performance-list-2024.pdf
船舶検査という視点で見るのであれば、Flag Inspectionをする識を持つフィリピン人は多くいるので、良いのかもしれません。
上記のようにフィリピンがFOCとして名乗りを上げているのは事実のようです。
しかし、それでもまだマイナーな船籍国のため、制度・リスク・手続きの不確実性があり、ファイナンスも付きにくい様です。
そのため、現状では新造船でフィリピン籍にする場合であっても建造段階では保守的な旗を使い、完成後に最適旗へ切り替えることが一般的になっています。


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