点検設備図(Plans For Means Of Access)と点検設備に関する手引書(Ship Structure Access Manual)の違い

船舶の構造検査を行う際には、安全かつ確実に船体内部へアクセスできることが重要です。そのため、船級規則では点検設備に関する要求が定められており、「Plans For Means Of Access(点検設備図)」と「Ship Structure Access Manual(点検設備に関する手引書)」という二つの異なる文書が存在します。両者は混同されることが多いものの、その目的や適用範囲は大きく異なります。

点検設備図(Plans For Means Of Access)とは

鋼船規則C編1編14.16.2では、船首倉、船尾倉、深水タンク、コファダム、貨物油タンク、高さの高いビルジホッパを有する貨物倉などの閉囲区画について、安全に点検できる設備を設けることを要求しています。
これらの区画では、
・はしご
・ステップ
・足場
・通路
・固定点検設備
・可搬式点検設備
などを利用し、主要構造部材を概ね3m以内から点検できることが求められます。
そして14.16.2.5では、”船舶には、各区画の点検設備の配置を記載した図面を備えなければならない”と規定されています。

これが Plans For Means Of Access(点検設備図) です。

つまり、点検設備図とは、「船内にどのような点検設備がどこに設置されているかを示した図面」であり、主な目的は点検設備の配置を明確にすることにあります。
言い換えれば、船体内部へアクセスするための梯子や通路などの配置図であり、比較的シンプルな図面です。

Ship Structure Access Manual(点検設備に関する手引書)とは

一方で、油タンカーや大型ばら積貨物船では、通常の目視検査だけでなく、精密検査(Close-up Survey)や板厚計測(Thickness Measurement)を実施する必要があります。
そのため14.16.3では、これらの船舶に対してより高度な点検設備の整備と文書化を要求しています。

適用船舶
Ship Structure Access Manual(SSAM)が要求されるのは、基本的に次の船舶です。
・総トン数500トン以上の油タンカー
・総トン数20,000トン以上のばら積貨物船(Bulk Carrier)
つまり、
一般貨物船や小型船では点検設備図のみが要求される場合が多い一方で、大型バルクキャリアや油タンカーではSSAMが要求される
という違いがあります。

なぜ大型バルクキャリアや油タンカーだけに要求されるのか

大型バルクキャリアや油タンカーは、船齢が高くなると特別検査や中間検査において、
・Close-up Survey(精密検査)
・Thickness Measurement(板厚計測)
が実施されます。

例えば20万トンクラスのケープサイズバルクキャリアでは、上部サイドタンクやビルジホッパータンクの内部構造を近距離から確認する必要があります。
そのため、「どこから構造部材へアクセスできるのか」だけでは不十分であり、「どの位置からどの構造部材を点検できるのか」まで明確にしておく必要があります。
この要求に対応するために作成されるのがShip Structure Access Manualです。

Ship Structure Access Manualに記載される内容

14.16.3.6では、SSAMに記載すべき内容が詳細に定められています。
主な内容は以下のとおりです。
① 各区画へのアクセス方法
各区画へ到達するための梯子、マンホール、足場などの配置図。

② 内部検査用点検設備
各構造部材がどこから点検できるかを示した図面。

③ 精密検査用点検設備
Close-up Survey実施時に使用する設備や、構造的重要箇所へのアクセス方法。

④ 保守・点検方法
固定点検設備や支持金物の保守方法。

⑤ ボート使用時の安全指針
タンク内部でボートを利用して検査を行う際の注意事項。

⑥ 可搬式設備の使用方法
可搬式梯子や仮設足場の設置・使用方法。

⑦ 可搬式設備の一覧表
船内に搭載される可搬式点検設備の管理リスト。

⑧ 点検・保守記録
定期点検や補修履歴の記録様式。

SSAMは「図面」ではなく「管理文書」
点検設備図とSSAMの最も大きな違いはここにあります。
点検設備図は単なる図面ですが、SSAMは運用・保守まで含めた管理文書です。
さらにSSAMは、
・第I部(設備仕様・使用方法)
・第II部(保守記録・点検記録)
の二部構成となっており、船舶の運航中も継続的に更新されなければなりません。
固定点検設備の年次点検記録や修理履歴も管理対象となります。

まとめ
点検設備図(Plans For Means Of Access)は、船内に設けられた梯子や通路などの点検設備の配置を示した図面です。一般的な船舶を含め、広く要求される文書です。
これに対して、Ship Structure Access Manual(点検設備に関する手引書)は、主として総トン数500トン以上の油タンカーおよび総トン数20,000トン以上のばら積貨物船に要求される文書であり、全体検査、精密検査(Close-up Survey)及び板厚計測を安全に実施するための点検設備に関する総合的な管理文書です。

すなわち、点検設備図が「どこに設備があるか」を示す図面であるのに対し、Ship Structure Access Manualは「その設備をどのように使い、維持し、検査に活用するか」まで含めた運用マニュアルであるという点が最大の違いと言えるでしょう。

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