HCM-GBSとは?大型ばら積船・油タンカーで付記される船級符号について

「HCM-GBS」という船級符号が付記されている船舶を目にすることがあります。これは船舶の性能や設備を示すものではなく、建造時の品質管理が通常よりも厳格な基準に基づいて実施されたことを表す重要な船級符号です。

本記事では、HCM-GBSの意味や対象船舶、建造時にどのような管理が行われているのかについて解説します。

HCMとは
HCMとはHull Construction Monitoring(船体建造中管理)の略称です。
新造船の建造において構造的に重要な箇所について、通常の船級検査に加え、「船体建造中管理ガイドライン(Guidelines for Hull Construction Monitoring)」に基づく品質管理を実施した船舶に対し、船級符号としてHCMを付記します。
この制度は、建造時の施工品質をより確実なものとし、就航後の船体構造の健全性を長期間維持することを目的としています。

HCM-GBSとは
SOLAS条約第II-1章第3-10規則の適用を受ける船舶については、HCMに加えてGBS(Goal-based Ship Construction Standards)が付記されます。
そのため、船級符号はHCM-GBSとなります。
SOLAS II-1/3-10規則は、長さ150m以上の油タンカー、および長さ150m以上のばら積み貨物船(シングルデッキでトップサイドタンクおよびホッパータンクを備えるもの。鉱石運搬船および兼用船を除く)を対象としており、これらの船舶では建造時からより高度な品質管理が要求されています。

建造中管理では何を確認するのか
建造中管理は、通常の船級検査を置き換えるものではありません。
通常の検査に加えて、船体の安全性に大きく影響する箇所について、建造工程ごとに品質確認を強化する制度です。
造船所はまずConstruction Monitoring Plan(建造中管理計画書)を作成し、船級の確認を受けます。その後、検査員はこの計画書に従って各建造工程で立会検査を実施し、施工品質を確認します。

特に確認される事項としては、
・部材同士のアライメント(位置合わせ)
・部材の取付状態
・ギャップ(隙間)
・溶接形状
・その他、構造品質に影響する施工状況
などが挙げられます。

これらは完成後には確認が困難になる項目も多く、建造中の段階で適切に管理することが重要になります。

構造的に重要な場所とは
建造中管理の対象となるのは、船体全体ではなく、構造的に重要な場所(Critical Structural Areas)です。
建造中管理計画書には、それらを示した図面が含まれ、一般的に次のような箇所が対象となります。
まず、高い応力が集中し、降伏や座屈が発生する可能性がある箇所です。次に、繰返し荷重によって疲労亀裂が生じやすい箇所です。さらに、腐食が進行しやすく、長期的に板厚減少が懸念される箇所も対象となります。
このような箇所は船体構造の信頼性に大きく関わるため、建造時から重点的な品質管理が行われます。

建造後も管理は続く
HCM-GBSの特徴は、建造中だけで終わらない点にもあります。
建造時に作成された建造中管理計画書や構造的に重要な場所を示す図面は、船舶が就航した後も活用されます。船主はこれらの資料を基に定期検査の準備を行い、船級は定期検査において当該箇所を重点的に確認します。
つまり、建造時の品質管理と就航後の保守管理が一つの流れとして結び付けられていることが、この制度の大きな特徴といえます。

実務ではHCM-GBSがほとんど
制度上は、GBS適用外の船舶であっても船主や造船所の申込みによりHCMを取得することが可能です。
しかし実務では、HCM単独の船舶を見る機会はそれほど多くありません。
近年建造される大型ばら積船や大型油タンカーの多くはSOLAS II-1/3-10の適用対象となるため、船級証書にはHCM-GBSと記載されているケースが大半です。
そのため、船級証書でHCM-GBSを見かけた場合は、「GBSの対象船であり、建造時には通常の船級検査に加えて、構造的に重要な箇所について厳格な建造中管理が実施された船舶」であると理解するとよいでしょう。

まとめ
HCM-GBSは、船体構造の品質を建造段階から確保し、その情報を就航後の保守管理まで継続して活用するための制度です。
建造中にはConstruction Monitoring Planに基づき、構造的に重要な箇所のアライメントや溶接品質などについて通常以上に厳格な確認が行われます。そして、その記録は就航後の定期検査にも引き継がれ、長期的な船体健全性の維持に役立てられます。
近年では、SOLAS GBSの適用を受ける大型ばら積船や油タンカーではHCM-GBSが一般的となっており、船級証書に付記されるこの符号は、「建造品質を重視した船舶」であることを示す一つの指標となっています。

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